農地所有適格法人(旧農業生産法人)の運営(税務と会計)

 2018.1.24

 

※個別具体的な税務の相談、税務申告の依頼は税理士にお願い致します。

 

 

事業年度の決定について

法人にすると、決算月を自由に決めることができます。

 

では、決算月に何をしなければならないのでしょうか。

 

それは、1年間の収入・支出を計算し、利益や損失を明らかにすることです。(個人事業主のときと目的は変わりませんが、作成する書類が多くなります。)具体例でいうと、現金・預金の残高を把握、売掛金の確認、未収入金の確認、在庫の確認、仮払金の清算……、などがあります。また、財務諸表とは別に、作成しなければならない法人税の申告書も多く、結果として作業量が多くなり、大変です。

 

ただでさえ決算は大変ですが、原材料や仕掛品が多い月は棚卸作業の手間が多くなるので、この月を決算月とすると仕事量がさらに増えてしまいます。

 

 

資金面に関しては、決算月から2か月以内に税金の申告と納税の必要があるため、資金が確保しやすい時期を想定して、決算月とした方が良いです。

 

税務面に関しては、消費税の免税を受けられる場合は、設立後最初の事業年度は1年を超えない範囲で最長にした方が良いです。

 

 

以上のように、決算期の選択は繁忙期を避けて農閑期に設定するなど、法人の実情に合わせて慎重に選択しましょう。

 

 

 

中小企業の会計基準

「中小企業の会計に関する基本要領」は簡便な会計処理の基準として、この基準を採用している中小企業が増えてきているようです。農地所有適格法人(旧農業生産法人)も、この基準を採用していることが多いようです。

 

 

 

作成する計算書類

農地所有適格法人(旧農業生産法人)は複式簿記での記帳が必要です。作成する財務諸表(決算書)は貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書です。

 

※貸借対照表(バランスシート)・・・一定期日の財務内容を示すもの

※損益計算書・・・会計期間の経営状況を表すもの

※製造原価報告書・・・農産物などの生産に係る原価を表すもの

 

 

 

農地所有適格法人(旧農業生産法人)の勘定科目

財務諸表に使用する勘定科目は社団法人日本農業法人協会が策定した標準勘定科目を使用するとよいです。企業会計原則を基礎として農業独特の勘定科目が追加されているため、詳細な経営分析を行うことができます。

 

社団法人日本農業法人協会が策定した標準勘定科目はコチラ

 

 

 

 

 

農地所有適格法人(旧農業生産法人)の税金

法人税・復興特別法人税

消費税・地方消費税

消費税には免税点が設けられています。

 

基準期間における課税売上高が1,000万円以下であれば免税されます。基準期間は、2期前の事業年度になります。基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合はその課税期間から課税事業者となります。特定期間とは、前事業年度開始日から6か月間です。

 

また、特定期間における1,000万円の判定は給与などの支払額の合計によってすることもできます。(つまり、課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等の支払額が1,000万円以下であれば免税となります。)

 

上記より、新規設立法人では基準期間の売り上げが発生していないので、原則、およそ2年間は免税されます。

 

 

また、課税事業者となる法人は決算日の翌日から2か月以内に所轄の税務署に消費税および地方消費税の申告と納税が必要になります。

 

 

 

法人事業税

法人事業税は法人の事業に対して課税される税金です。

 

一定の農事組合法人は非課税です。

 

 

 

法人住民税

法人住民税は法人税額により計算する法人税割と、均等割から構成されています。均等割は資本金額や従業員数により計算します。均等割は、売上が赤字であっても納税する必要があります。

 

 

 

 

農地所有適格法人(旧農業生産法人)における主な優遇税制

農業経営基盤強化準備金制度

農業者が受領した経営所得安定対策等の交付金は、「収入金額(益金)」に該当し、所得税の対象になります。

 

しかしながら、青色申告により確定申告を行う法人(個人も含む)が農業経営改善計画に従って、①受領した交付金を農業用固定資産の取得資金に充てるために準備金として積み立てた場合、この積立金を損金に算入できます。

②さらに準備金を5年以内に取り崩し、またはその事業年度に受領した交付金を活用して農用地等を取得し、事業に供した場合、当該資産を圧縮記帳することができます。

 

※圧縮記帳とは、交付金により取得した農業用固定資産の帳簿価額を一定額まで減額し、その減額分を損金に算入することにより、その事業年度の所得を減額する方法です。

 

 

 

国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入

国または地方公共団体から固定資産の取得または改良に充てるために補助金などの交付を受けた場合に、その目的に適合した固定資産の取得または改良をしたときは、原則、補助金の額に相当する額の圧縮記帳が認められています。

 

圧縮記帳により、通常、益金として算入する補助金などを損金に算入できます。計上する固定資産の取得価額は、実際の取得価額から補助金などの収入を差し引いた金額となります。これにより圧縮記帳した金額の課税を将来へ繰り延べる効果があります。

 

 

 

 

 

農地所有適格法人(旧農業生産法人)の報告義務

農地所有適格法人は毎事業年度、農業委員会に事業の状況などを報告しなければなりません。

 

この規定に違反して、報告をしなかったり、虚偽の報告をした場合、30万円以下の科料に処されます。

 

 

 

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