2018.4.8
個人農家の承継は、法人の場合よりも複雑です。まず、家族経営の農業承継では、後継者の選定・後継者の教育・生産技術や技能の承継・作業の分担・経営権の委譲・経営者能力の承継・経営資産の承継の順で行われます。
この経営資産の承継は相続によって行われることが多く、法定相続分による遺産分割を行った場合には、農業相続人以外へ資産が分散し、農業経営に悪影響を及ぼす可能性があります。そのような事態を避けるため、遺言等によって農業継承者へ資産を一括で相続させたり、生前贈与を検討していく必要があります。
まず相続による税負担について知り、その上でどのような方法で資産移転するか、法人化した方が良いのか、を考えます。
ここでは、資産の評価について紹介しています。
※個別具体的な税務の相談、税務申告の依頼は税理士にお願い致します。
相続税とは、個人が死亡した人の財産を引き継いだ(取得した)ときに、その財産をもとにして課される税金です。原則的に、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた額に課税されます。
遺産総額が基礎控除額以下であれば相続税の申告書を提出する必要はありません。
農地の評価額は、固定資産税評価額と大幅にずれる場合があり、単純に固定資産税評価額で相続税申告の有無を判断するのは危険です。
土地の評価は地目ごとに判定します。地目の判定および地積は、「相続開始時の現況」によって判断します。そのため、現地確認が必要です。
路線価方式とは、宅地の評価単位である1画地の面する路線(道路)の路線価を基礎として、その画地の地積を乗じて求めた金額によって評価する方法で、市街地の評価に多く適用されています。
倍率方式とは、固定資産税評価額に、国税局長がその地域の実情に即して定めた倍率を乗じて計算する方法です。主に市街地区域以外に適用されています。
宅地の評価額は、路線価方式または倍率方式で計算されるが、いずれの方法で評価さるのかは「財産評価基準書」に示されています。
宅地の評価は土地の筆ごとではなく、利用単位ごとに評価されます。例えば、一筆の宅地内に貸付用不動産と自宅がある場合は利用単位が異なることから、それぞれの利用面積ごとに評価が行われます。
農地の税務上の評価は次の4種類に分けられ、評価されています。
区分 |
評価方法 |
純農地 |
倍率方式 |
中間農地 |
倍率方式 |
市街地周辺農地 |
宅地比準方式 |
市街地農地 | 宅地比準方式 |
宅地比準方式とは、農地が宅地であるとした場合の価額から、その農地を宅地に転用した場合にかかる造成費の金額を控除した金額によって評価する方法です。ここでいう造成費の金額は、整地・土盛り・土止めに要する費用の額を、地域・年分ごとに国税局長が定めた財産評価基準書に記載されています。
上の表での農地の区分は以下です。
純農地・・・農用地区域内農地、第1種農地、甲種農地
中間農地・・・第2種農地
市街地周辺農地・・・第3種農地
市街地農地・・・農地法第4条または農地法第5条の許可を受けた農地、市街化区域内の農地
純農地や中間農地にあたる農地は、地目ごと、かつ耕作の単位(あぜ等で区分けされている農作物の栽培単位)となっている「1区画ごとの農地」を単位として評価することになっています。市街地周辺農地や市街地農地にあたる農地は、耕作の単位ではなく、「一団の農地」を評価単位としています。農地について権利設定(永小作権やそのほかの耕作権)されている部分は権利者ごとに1利用単位として評価します。
評価する宅地が農用地区域内農地または市街化調整区域内農地にある農業用施設用地である場合の評価方法は、農地であるとした場合の1㎡当たりの価額に、課税時期にその農業用施設に供されている宅地とする場合の1㎡当たりの造成費に相当する金額(財産期遵守に記載されている額)を加算し、その金額に地積を乗じて計算した金額によって評価します。
つまり、大まかに下記になります。
農業用施設用地の評価
= (農地とした場合の価額(1㎡当たり)+宅地にするための造成費(1㎡当たり))×地積
建物については、自用であれば固定資産税評価額がそのまま評価額となります。貸家の場合は、自用として評価した価額から借家権の価額に賃貸割合を乗じて求めた価額を差し引いた金額が評価額となります。
農協や信用金庫への出資金は払込済出資金額により評価します。
農事組合法人への出資金は純資産価額を基として、出資持分に応じる価額によって評価します。
農業にかかわる機械装置・工具器具備品・車両運搬具などの一般動産は1個(1組)ごとに評価します。評価額は売買実例価額、精通者意見価格等を斟酌して評価しますが、それらが不明の場合は、同種同規格の新品小売価額から償却費などを控除した金額により評価します。ただし、商品や原材料、生産品などの棚卸商品などの特別な動産は、別の財産評価基本通達の定めによって評価します。
ご連絡いただければ、税理士を紹介致します。
下記問い合わせフォームからどうぞ。