農地に関する国土利用計画法による届出

2024.1.20

 

農地の譲渡については、農地法による許可申請や届出だけではなく、国土利用計画法による届出などが必要な場合があります。

 

ここでは、国土利用計画法による届出などについてご案内します。

 

1. 国土利用計画法のねらい

国土利用計画法は、土地の投機的取引や地価の高騰を抑制して、適正で合理的な土地利用がされるように、一定面積以上の土地取引のときは、許可の申請や届出をしなければならないことを定めています。

 

ただし、農地を農地として利用するために譲渡などするときは、農地法第3条による規制があるため、国土利用計画法の許可申請や届出は必要ありません。

 

しかし、農地を農地以外の目的で利用するために譲渡などするとき(つまり農地法第5条に該当するとき)は、国土利用計画法の規制の対象となり、許可の申請や届出が必要となります。

 

※土地が規制区域というものに所在しているときは許可申請が必要ですが、これまでに規制区域の指定はされていないと思われます。

2.事後の届出

取引の対象となる土地が、規制区域・監視区域・注視区域のどれにも指定されていない場合は、一定面積以上の土地取引契約をした後に、届出が必要となります。

2-1.届出が必要な面積

次の面積以上の土地取引契約のとき、届出が必要です。

 

市街化区域 2,000㎡
市街化区域を除く都市計画区域 5,000㎡
都市計画区域以外の区域 10,000㎡

 

なお、土地の権利取得者が、同じ利用目的で、連続してまとまっている複数の土地を取得した場合、最終的に上記の面積以上を取得することになるときは、たとえ個々の土地の面積が小さかったとしても、それぞれの契約ごとに届出が必要になります。

2-2.届出が必要な取引

次の取引のときに、届出が必要です。

 

売買、共有持分の譲渡、営業譲渡、譲渡担保、代物弁済、交換、予約完結権や買戻権の譲渡、信託受益権の譲渡、地位譲渡、第三者のためにする契約、賃借権・地上権の移転・設定(権利金※1のやり取りがある場合)、現物出資

※これらの取引の予約も含みます。また、停止条件付、期限付、買戻特約付の契約も含みます。

 

※1 権利金とは、権利の設定時などに支払われるもので、毎月の賃料や地代のことではありません。

2-3.届出の方法

契約日から2週間以内に、土地の権利取得者が、土地が所在する市区町村に届出を行います。

※契約を締結した日から2週間であって、土地の移転登記を行った日、土地の引渡し日、残代金の決済日、条件成就の日などではありません。

 

届出書は、市区町村の意見を付けて、都道府県に送られます。

 

届出のために提出する書類は、届出書のほかに、契約書の写し・位置図・周辺状況図(住宅地図など)・形状図(公図の写など)です。

※詳細は、土地が所在する市区町村にお問い合わせください。

2-4.届出の審査

市区町村から送られた届出書は、都道府県において、土地の利用目的の審査が行われます。

 

土地の利用目的が、公表されている土地利用計画に合致しないときは、利用目的の変更の勧告がされます。(届出から3週間以内に勧告があります。)

 

この勧告に従わないときは、勧告の内容を公表されることがあります。

 

また、必要に応じて、助言を受けることもあります。

 

勧告が行われない場合は、特段の通知はありません。

届出後の審査。変更の勧告があって従わなかったときは公表されます。また助言があることもあります。勧告が行われない場合には通知はありません。
国土利用計画法の届出をした後の審査の内容

2-5.罰則

契約日から2週間以内に届出をしなかったり、うその届出をした場合は、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金、という重い処罰がありますので注意をしてください。

3.事前の届出

取引の対象となる土地が監視区域や注視区域に該当する場合、一定面積以上の土地取引契約をするときは、取引の当事者双方が契約締結前に、土地が所在する市区町村に届出をする必要があります。

3-1.監視区域

監視区域……地価が急激に上昇したり、上昇するおそれがあって、適正で合理的な土地利用が困難となるおそれがある区域として、都道府県知事などが期間を定めて指定した区域のこと。

 

監視区域は、注視区域よりも規制が厳しいです。

 

現在のところ、東京都の小笠原村のみと思われます。

3-2.注視区域

注視区域……地価が、一定期間内の社会的・経済的事情の変動を考えても、かなり上昇したり、上昇するおそれがあって、適正で合理的な土地利用に支障が生じるおそれがある区域として、都道府県知事などが期間を定めて指定した区域のこと。

 

注視区域は、監視区域よりも規制が緩やかです。

 

これまでに、注視区域の指定はされていないと思われます。

4.まとめ

国土利用計画法による届出についてご案内しました。

 

農地法第5条による農地転用の場合、面積や取引内容によっては国土利用計画法による届出が必要となります。

 

農地法の許可申請と比べると比較的簡単な手続きですが、忘れてしまうと罰則がしっかりありますので、くれぐれも忘れないように注意してください。

 

その他、農地転用の手続きでご相談がございましたら、ぜひ幣事務所にお問い合わせください。