生産緑地地区内での農業関連施設の設置

2023.12.27

 

生産緑地地区は、市街化区域内にある農地など(現在利用されている農地、採草放牧地、池沼、それに隣接し一体的に利用される農業用道路などの土地)であり、一定の条件に該当して指定された区域のことです。

 

生産緑地区内の生産緑地では、営農などを継続していかなければならず、建物などを建築することは原則できません。

 

ただし、ある一定の場合であれば、建物を建築することなどができます。

 

ここでは、生産緑地地区内での農業関連施設の設置についてご案内します。

 

1. 生産緑地地区内で可能な行為

生産緑地地区内では営農を継続していく必要がありますが、以下の行為は、市町村長の許可を得てすることができます。

  1. 建築物や工作物の新築・改築・増築
  2. 宅地の造成、土石の採取、その他の土地の形質の変更
  3. 水面の埋め立て・干拓

ただし、生産緑地地区に指定される前に既に行為を開始していたり、非常災害のため必要な応急措置であれば、許可を得ないでもすることができますが、届出が必要です。

2.生産緑地地区内で設置可能な施設

以下の施設の設置や管理のためであって、良好な生活環境が損なわれないのであれば「1.生産緑地地区内で可能な行為」の1~3が認められます。(生産緑地法第8条第2項より)

2-1.農林漁業のために必要な施設(1号施設)

  • 農産物などの生産や出荷のための施設:ビニールハウス、温室、育種苗施設、集荷施設など
  • 農林漁業の生産資材の貯蔵・保管のための施設:農機具などの収納施設、種苗貯蔵施設など
  • 農産物などの処理・貯蔵に必要な共同利用施設:選果場、ライスセンターなど
  • 農林漁業に従事する者の休憩施設:休憩所、あずまや、農作業の準備をし作業の合間に休憩を取るための施設など

2-2.生産緑地に支障がなく、農林漁業の安定的な継続のために必要な施設(2号施設)

  1. 当該生産緑地地区とその周辺の地域内で生産された農産物など(「地域内農産物など」と呼びます。)を主な(※1)原材料として使用する製造・加工のための施設:ジャムを製造・加工する施設など
  2. 主に(※2)地域内農産物などやこれらを主な原材料として製造・加工された商品の販売のための施設:直売所など
  3. 地域内農産物などを主な(※1)材料とする料理の提供のための施設:農家レンストランなど

※1 量的または金額的に5割以上であること

※2 他の農産物や製造・加工された商品よりも量的または金額的に多いこと

 

ただし、上記1~3の施設は、次の基準を満たす必要があります。(生産緑地法施行規則第2条)

  • 当該生産緑地地区の土地から、上記1~3の施設の敷地を除いた面積が500㎡以上であること(ただし、条例に別の規模が定められているときは、その規模以上の面積であること)
  • 当該生産緑地地区内の1~3の施設の合計敷地面積が、当該生産緑地地区の面積の20%以下であること
  • 当該生産緑地での農林漁業の主な従事者が、設置・管理を行う施設であること

 

(例)生産緑地地区に設置する直売所の敷地が100㎡で、農家レストランの敷地が200㎡で、生産緑地地区の面積が2,000㎡であるとします。

生産緑地地区の面積から直売所と農家レストランの敷地の合計面積を除くと1,700㎡となり、500㎡以上なので基準のaに適合します。

また、直売所と農家レストランの敷地の合計面積は300㎡で、生産緑地地区の面積の20%(400㎡)よりも小さいことから、基準のbにも適合することになります。

生産緑地地区における2号施設の基準(基準aと基準bに適合した後、基準cにも適合する必要があります)
生産緑地地区における2号施設の基準(基準aと基準bに適合した後、基準cにも適合する必要があります)

2-3.多数の、主に都市住民がレクリエーションの目的で継続して農作業するために設置する施設(3号施設)

  • 農作業の講習のための施設
  • 管理事務所などの管理施設:市民農園の管理事務所、管理人詰所、管理用具置場、ごみ処理場など

3.申請

次のような書類などを市町村に提出して申請をします。

 

建築物や工作物の新築・改築・増築のとき:申請書、付近見取図、登記事項証明書、公図の写し、配置図、平面図、立面図、断面図

 

宅地の造成、土石の採取、その他の土地の形質の変更:申請書、付近見取図、登記事項証明書、公図の写し、平面図、断面図

 

水面の埋め立て・干拓: 申請書、付近見取図、登記事項証明書、公図の写し、平面図、断面図

 

2号施設では、販売・原材料の仕入れ計画書、同意書(他者の生産緑地も併せて基準に適合させているとき)が必要となります。

 

また、3号施設では、市民農園を開設したことが分かる資料が必要となります。

 

工事は、許可証を受取ってから開始します。

4.原状回復命令

生産緑地法第9条によると、生産緑地地区内で許可なく、「1.生産緑地地区内で可能な行為」をした場合は、その行為を行った者、もしくはその者から土地や建物を譲り受けたりした者に対して、市町村長から原状回復命令が下されることがあります。

原状回復が難しい場合は、それに代わる必要な措置を取るように命令をされます。

 

また、2号施設を設置するとき、他の者が所有する生産緑地も併せて基準に適合させている場合、その他者の生産緑地が何らかの理由で廃止されると、基準に適合しなくなるので、原状回復命令が下される可能性が高くなります。

くれぐれも注意し、できるだけ自らの生産緑地で基準に適合させるようにした方が良いです。

5.まとめ

生産緑地地区での農業関連施設の設置についてご案内しました。

 

都市に住んでいる住民からは、新鮮な農産物が食べたいという要望があると思います。

これらの要望に応えることで、都市での農業が継続していけると思いますので、ぜひご参考としてください。