農地所有適格法人の要件

2018.7.19更新

 

まず初めに、農業法人や農地所有適格法人(旧農業生産法人)とはどのような法人を指しているのかをご説明します。

 

農業法人とは、農業に関わる事業を行う法人全般のことを指す言葉ですが、法律で規定されている言葉ではありません。

 

一方、農地所有適格法人(旧農業生産法人)は農地法で定義されいて、農地の権利を取得すること(買ったり、借りたりすること)が可能な法人のことを指しています。

農業法人と農地所有適格法人

農地所有適格法人の4つの要件は下記です。

  1. 法人の組織形態要件
  2. 事業要件
  3. 構成員要件
  4. 業務執行役員要件

1.法人の組織形態要件

農地所有適格法人になれるのは、下記のいずれかの組織形態です。

  1. 農事組合法人(1号法人は除きます)
  2. 株式会社(非公開会社)
  3. 持分会社

A.農事組合法人

農事組合法人とは、その法人の組合員の共同の利益の増進を目的とする法人で、農業協同組合法で定められたものです。

 

農事組合法人は、事業内容によって2つに分けることができます。

 

1つは1号農事組合法人と呼び、主に集落で機械施設を共同購入して利用したり、田植えや防除等の農作業を共同で行ったりするもので、法人自体が農業経営を行うことはできません。

 

もう1つは2号農事組合法人と呼び、農業経営を行うことができます。

(共同で農作業を行い、農業経営も行う農事組合法人についても2号農事組合法人と呼びます。)

B.株式会社

株式会社であれば、本来、株式を譲渡して、株主の地位を自由に譲渡することができます。

 

しかしながら、農地所有適格法人になるためには、株主の地位を自由に譲渡することができない会社(株式譲渡制限会社=非公開会社)でなければなりません。

C.持分会社

持分会社は、その構成員の地位(持分)をもともと自由に譲渡することができない会社です。

(持分会社の構成員のことを社員と呼びます。)

2.事業要件

その法人の主たる事業が農業とその関連する事業であることが要件です。

 

直近3か年の農業(関連事業を含む)の売上高が、法人の事業全体の過半を占めているかどうかで判断します。

 

ただし、異常気象等によって農業の売上高が著しく低下した年は、その3か年から除外されます。

 

新規に農業を行う場合は、今後3か年の事業計画に基づき判断します。

したがって、新規の場合には営農計画書の準備が重要になります。

 

農業の関連事業とは、以下のものを指しています。

  1. 農畜産物の貯蔵・運搬・販売
  2. 農業生産に必要な資材の製造(自己の農業生産に使用する飼料に加え、他の農家に販売するための飼料を含みます)
  3. 農作業の受託
  4. 市民農園や観光農園などの農作業を体験できる施設の設置・運営や民宿業、直売所などを営むこと
  5. 自己の法人が生産した農畜産物を原料として製品の製造を行うこと

※自己の法人が生産している農畜産物に、他の農家が生産した農畜産物を加えることはできますが、自己の法人が生産していない農畜産物を他の農家から集めて、貯蔵・運搬・販売・加工することはできません。

3.構成員要件

株式会社においては、農業関係者の議決権の合計が総議決権の過半を占めていることであり、持分会社においては、農業関係者の社員の数が社員の総数の過半を占めていることが要件です。

 

農業関係者には、下記の者がなることができます。

  1. 農地等の権利提供者
  2. 農作業委託農家
  3. 農業の常時従事者
  4. 地方公共団体、農業協同組合、農業協同組合連合会
  5. 農地中間管理機構または農地利用集積円滑化団体を通じて法人に農地を貸し付けている個人

Ⅰ.農地等の権利提供者

法人に農地等を貸したり、譲渡して6か月以内に構成員となり、現在も引き続いて構成員である者を指しています。

 

また、農地等を貸した者から相続した承継人も含みますが、被相続人である個人が死亡してから6か月以内に構成員となり、現在も引き続いて構成員である者でなければなりません。

 

さらに、これから農地等を貸したり、譲渡しようとする者も含みます。

Ⅱ.農作業委託農家

「農作業」とは、農産物を生産するために必要な基幹的な作業のことです。

 

稲作においては、「耕起・代掻き」、「田植え」、「稲刈り・脱穀」を指しています。

麦・大豆栽培については、「耕起・整地」、「播種」、「収穫」を指しています。

その他の農業では、上記について準じた農作業を指しています。

Ⅲ.農業の常時従事者

常時従事しているとは、原則として年150日以上であることが必要です。

(ただし例外規定があります。)

 

新規の法人の場合には、営農計画書の内容によって判断されます。

 

ただし、<ⅰ>病気や負傷により療養等が必要であるとの理由によって、一時的に法人の行う農業に常時従事することができない者で、その理由がなくなれば常時従事する者であると農業委員会が認めた者、<ⅱ>6か月以内に法人が行う農業に常時従事することが確実であると認められる者も、農業の常時従事者として含めることができます。

4.業務執行役員要件

役員または構成員の過半が農業(販売・加工などを含む)の常時従事者(原則、年間150日以上)であること、さらに役員・構成員または使用人(農場長などの責任者が該当する)のうち1人以上が農作業に従事(年間60日以上)することです。

 

「農作業」とは、実際に行う農作業のことを指していて、「耕うん、整地、播種、施肥、病害虫防除、刈取り、水の管理、給餌、敷きわらの取替えなどの工作または養畜に直接必要な作業」のことです。

 

「事業に必要な帳簿の記帳業務、集金など」は農作業には含まれません。

 

また、その法人の代表権を持つ者は農業を営む地域に居住し、農業に常時従事することが望まれ、兼務者や兼業者は常時従事者とはみとめられない場合があるとされています。