2018.8.7更新
取得時効による農地の取得(所有権の移転登記)は、農地法の許可なしにすることができます(届出は必要です)。
この取得時効の要件は下記です。
1.2.4.を以下で説明します。
<上記1.について>
農地を購入した者は所有の意思があって占有しているため時効取得を主張できる可能性がありますが、農地を賃借している者は所有の意思がないため、いつまでたっても農地の時効取得を主張することはできません(賃借権を時効取得できる可能性はあります)。
<上記2.について>
「平穏」とは「暴行もしくは強迫」をしないことです。
「公然」とは「隠匿」しないことであり、不動産については問題となることはありません。
平穏かつ公然と占有していたことは推定されます。
<上記4.について>
一定の期間、継続して占有していなければなりません。
占有を承継した者は、前に占有していた者の占有も併せて主張することができます。
前に占有していた者とは、売主や被相続人を指します。
下記に図を示します。
取得時効が完了するための期間は、占有の開始の時に善意・無過失であれば、10年と定められていますが、そうでない場合は20年と定められています。
農地法の許可を得ずに占有を始めたことは、いかなる理由があっても無過失とは言えないため、20年間の継続した占有がなければ時効取得を主張できません。
※善意とは、一般的な「良心に従って」という意味ではありません。
「知らずに」という意味の法律用語です。
時効取得による農地の所有権の移転は、農地法の許可がなくても登記をすることができます。
そのため当事者双方が、時効取得でないにもかかわらず、時効取得を原因として登記することが行われていました。
このようなことを未然に防止するため、以下のような趣旨の通達が農水省から出されています。
登記完了前であれば、登記官より農業委員会に通知をし、調査をして、取得時効完成の要件を備えておらず、農地法に違反すると判断される場合には、速やかに登記官にその旨を通知するとともに、申請当事者にも伝えて、申請を取下げさせ、適切な指導を行うとしています。
登記完了後であれば、登記官から通知を受けた農業委員会は、速やかに取得時効完成の要件を備えているか否かの調査をし、農地法違反であることが判明したときは、申請当事者にその旨を伝え、速やかに登記の抹消、是正を行うよう指導するとしています。
さらに、農業委員会は、申請当事者が通知内容の履行を遅滞しているときは、督促し、遅滞の理由と履行状況の報告を求め、その報告を都道府県知事に提出します。
都道府県知事は内容の検討を行い、履行遅滞に相当の理由があると認められない場合は、告発をするとしています。
上記の通達があるため、あらかじめ農業委員会に相談の上、手続きを行うことも検討する必要があると思います。
通達の内容を図にすると下記のようになります。
また、たとえ時効取得したとしても、当該の農地を農業以外の目的で利用することはできません。
農業以外の目的で利用したいのであれば、別途、農地法にのっとって転用許可を得る必要があります。
この手続きを経ていないのであれば、農地法違反になってしまいます。