知っておきたい!農地に関する処分と罰則

2024.9.14更新

 

農地を譲り受けたり、借りたり、転用しようとするときは、許可が必要な場合があります。

しかし、許可を得ないでそのようなことをした場合には、当然、なんらかの処分を命令されたり、罰則があります。

 

ここでは、農地に関する違反への処分や罰則についてご案内します。

1.違反転用に対する処分

農地転用に関して、農地を農業のために利用することと、公益や関係者の利益を比較して、必要な場合は、下記の者に対して、農地転用の許可の取り消し、許可した際の条件の変更、許可への条件の付加、工事などの停止命令、原状回復命令をすることができます。

  1. 無許可で農地転用した者(相続人や合併して存続する法人を含む)
  2. 農地転用許可の条件に違反した者
  3. 上記1と2の者から、その土地についての工事などを請け負った業者やその下請け業者
  4. ウソなどの不正の手段で農地転用の許可を得た者

 

例えば、勝手に農地に太陽光パネルを敷設したり、農地を駐車場に転用する許可を得たのに勝手に家を建てた場合に、農地に復元するよう命令される可能性があります。

2.農地の譲り受け、借り受け、転用に関する罰則

次の場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。

  • 無許可で農地を譲り受けたり、借り受けたり、転用したとき
  • ウソなどの不正の手段によって、農地の譲り受けや借り受けの許可、転用の許可を受けたとき
  • 違反転用に対する工事などの停止命令、原状回復命令に違反したとき

 

例えば、近所の農地の所有者から、「この畑、使わないから貸してあげるよ」と言われ、手続きなしで農地を借りたり、駐車場に転用する許可を得たのに勝手に家を建てた場合が該当します。

 

※法人が上記の違反行為をした場合は、いずれのときも、1億円以下の罰金です。

農地転用の罰則に該当する一例
農地転用の罰則に該当する一例

3.許可がない場合の農地の売買・貸借

行政からの処分や罰則ではありませんが、農地法第3条の許可を受けていない場合、下記のとおり、農地の売買や貸借などは効力が発生しません。

 

≪農地法第3条第6項≫

”第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。”

 

≪農地法第3条第1項≫

”農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。”

 

 つまり、農地の売主と買主(または農地の貸主と借主)の間で売買や貸借の契約をしていても、許可がなければそれらの行為が有効にはならないということです。

この状態では、買主は所有権の移転の登記はできず、売主は引き続き固定資産税の納税の義務があります。

 

しかし、許可がなく、契約があるだけの状態であっても、農地の買主や借主は、相手(売主や貸主)に対して許可申請に協力するよう求めることができ、売主や貸主はその求めに応える義務があります。

※農地法第3条の許可申請は、売主・貸主と買主・借主が共同して申請する必要があるため、署名・捺印や必要書類の準備が、許可申請に協力する、ということにあたります。

 

この農地の買主や借主からの許可申請に協力するよう求める権利は、時効によって5年または10年で消滅してしまうので、権利を行使する場合は注意してください。

4.農地所有適格法人の報告に関する罰則

農地所有適格法人が、農地を所有または借りているときは、毎事業年度終了から3か月以内に、農地所有適格法人の要件を満たしている旨の報告をしなければいけません。

 

この報告をしなかった、またはウソの報告をした場合は、30万円以下の過料です。

5.農地の相続などの届出に関する罰則

以下の場合は、農地を取得したことの届出が必要です。

  • 相続や遺産分割
  • 法人の合併や分割
  • 時効取得

この届出をしなかった、またはウソの届出をした場合は、10万円以下の過料です。

6.生産緑地地区内の行為について

生産緑地地区内において以下の制限された行為をするときは許可が必要です。

  • 建築物などの新築・改築・増築
  • 宅地の造成、土石の採取、その他の土地の形質の変更
  • 水面の埋立て・干拓

6-1.生産緑地地区内の行為に関する罰則

<制限された行為をしたことへの罰則>

次の場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。

  • 無許可で、生産緑地地区内で制限された行為を勝手にしたとき
  • 許可に付いた条件に違反したとき

 

例えば、生産緑地地区内で、勝手に家屋の新築・改築をしたり、勝手に駐車場へ転用することが該当します。

 

 

<制限された行為の実施状況の報告に関する罰則>

許可を得て、生産緑地地区内で制限された行為をした場合、その行為の実施状況の報告を求められることがあります。

 

※制限された行為をした者から当該土地や建築物などを承継した者にも報告が求められる可能性があります。

 

この報告を行わない、またはウソの報告をした場合は、20万円以下の罰金です。

6-2.生産緑地地区内の行為に関する処分

無許可で生産緑地地区内で制限された行為をし、または許可に付いた条件に違反した場合、必要な限度で、原状回復(原状回復が難しい場合は代替措置)命令があり得ます。

 

※制限された行為をした者から当該土地や建築物などを承継した者にも命令が下される可能性があります。

 

この命令に違反した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

 

例えば、生産緑地地区内で勝手に倉庫を建てた場合、その倉庫を解体し、農地の状態に復元するよう、命じられる可能性があります。

そして、その命令に従わなかった場合に罰則を受ける可能性があります。

生産緑地地区内の農地での、建物新築の罰則に該当する一例
生産緑地地区内の農地での、建物新築の罰則に該当する一例

6-3.生産緑地地区の標識に関する罰則

生産緑地地区が定められたときは、そのことが誰でもわかるように、標識が設置されます。

この標識を、承諾を得ずに動かしたり、取り除いたり、汚したり、壊したりした場合は、20万円以下の罰金です。

 

例えば、生産緑地地区の標識について、邪魔だと考えて勝手に取り除いたり、見た目が悪いと判断して勝手に別の色にすることが該当します。

7.まとめ

農地に関する違反への処分と罰則についてご案内しました。

 

農地を利用する際は、どのような手続きが必要か、事前によく確認することが重要です。

違反した場合、決して軽くはない罰則がありますので、無許可で行わないようにしてください。

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