個人農家と農地所有適格法人(旧農業生産法人)の経営比較

 

農地所有適格法人

(旧農業生産法人)

個人農家
税務関係

1.法人税適用となり、税制で有利

2.役員報酬には給与取得控除が受けられる

3.役員退職金に取得控除が受けられる(勤続年数が5年を超える役員)

4.青色欠損金の繰越控除9年

5.法人税は定率課税

6.設立後、消費税2期免税(一定の条件で)

7.役員の自宅の賃料を法人経費計上することができる

8.出張旅費日当の支給ができる

9.決算月を選択できる

10.赤字でも法人住民税の均等割納税

11.相続税・贈与税の納税猶予の特例を受けた農地を法人が使用する場合、ある条件では納税猶予の打ち切り

12.法人所有の現預金は原則的に経営者が私的に使うことができない(経営者への貸付になる。)

1.法人と個人のように所得の分散ができない

2.事業主の給与は必要経費に算入することができない

3.事業主の退職金は制度加入によるものに限られる

4.純損失の繰越控除3年(青色申告者)

5.所得税は累進課税のため、所得増加に比例して税率も増加

6.開業後、消費税2期免税(一定の条件で)

7.自宅賃料は経費計上ができない

8.事業主の出張旅費日当は経費計上ができない

9.すべて12月決算

10.赤字の場合は、個人所得税・住民税はかからない

11.相続人が特例農地等にて農業を続ける限り、納税猶予が継続

12.事業用の現預金であっても事業主本人に帰属する財産であり、自由に使用できる(会社と個人の分離が図れず事業は小規模な場合が多い。)

経営承継

1.法人所有資産は相続対象外

2.相続による事業用財産の分散を防止できる。事業継続の安定

3.株式の譲渡による計画的な相続対策ができる

4.事業承継税制により相続税、贈与税の一定割合の納税猶予ができる

5.経営移譲は代表者変更の手続きのみ

1.事業用財産も事業主に帰属するため相続対象

2.相続のたびに事業用財産の所有者を確定する必要がある。事業継続不安定

3.生前の財産所有者を変更することによる贈与税の負担

4.納税猶予制度はあるものの限定的

5.相続人が農業の開業手続きをする必要あり。その他、名義変更も必要

資金調達

1.融資枠が大きくなり事業拡大しやすい

2.社債など、金融機関からの資金調達以外も可能になる

3.家計と分離することで金融機関からの信用が向上

1.法人に比べて融資枠が小さい

2.社債の発行はできない

3.会計上、資金使途が不明確になりやすく、信用に劣る

各種保険制度

1.労災保険は強制加入(従業員のみ)

2.雇用保険は強制加入(従業員のみ)

3.健康保険は強制加入(従業員のみ)

4.厚生年金保険に強制加入

1.労災保険は任意加入(従業員5人未満のとき)

2.雇用保険は任意加入(従業員5人未満のとき)

3.健康保険は任意加入

4.厚生年金保険は任意加入

事業運営

1.信用力向上による取引先拡大の可能性

2.複式簿記の記帳が義務となり、事業負担が増加する可能性

3.設立(法人化)には法定費用・資本金が必要で、代表者などの登記事項に変更が生じた場合も費用がかかる

4.解散・清算する場合の手続きが煩雑

1.信用力は限定的

2.会計について、法人ほどの専門知識が必要ない

3.開業にかかる法定費用は必要ない(許認可は別)

4.比較的容易に事業を廃止できる

 青い文字で書いたものをメリット、赤い文字で書いたものをデメリットとしています。

(上記の農地所有適格法人の法人形態は株式会社の場合です。)

 

まとめると、農地所有適格法人(旧農業生産法人)の方が、税務面・経営承継・資金調達では有利であるが、事業の運営については複雑な面があり、業務量が増えると思われます。

そのため少ない人員のうちは、法人化をするメリットは限定的と思われます。

 

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