2024.4.18
農地を貸借する場合、農地が共有であれば共有者全員の同意が必要となります。
しかし、誰が共有者なのか分からなくなってしまうことがあります。
このような場合、農地を借りて規模を拡大しようとする人や、農地の管理が大変なので誰かに貸したいという人にとって、貸し借りができずに困ってしまうことがあります。
そして、将来的には、農地が荒廃してしまい、周囲の方々にも迷惑をかけてしまう可能性もあります。
このような問題を解決するために、「所有者不明農地制度」があります。
ここでは、所有者不明農地制度について、ご案内をしていきます。
相続登記が行われてないと、農地は相続人全員の共有となります。
そして、相続登記が長い間行われていないのに相続が繰り返されていると、この共有者の数は膨大になってしまいます。
当然、共有者の数が多ければ、全員を把握することは大変なことです。
農林水産省が行った、令和3年の実態調査によると、相続未登記農地と相続未登記のおそれのある農地は、合計でおよそ102万9,000ha(全農地面積の2割)となっており、結構な数の農地が相続登記が行われていないということがわかります。
農地を貸し借りするときには、農地の共有者全員の同意が必要であるため、共有者を探すことが非常に重要ですが、この作業はとても大変で、個人では限界があります。
その解決策として、「所有者不明農地制度」があります。
所有者不明農地制度とは、登記簿から所有者がすぐに分からない農地、または所有者が分かったとしても所在が不明で連絡が取れない農地について、農業委員会が共有者を探し、共有者の同意を得るなどして、農地バンクが一定期間借り上げ、新たな担い手に貸し付ける制度です。
この制度を利用することで、共有者全員の同意を得なくても、農地を貸借することが可能になります。
この制度は2つのパターンがあるので、以下で詳しくご案内します。
所有者不明農地制度には、農地バンク法と農地法の2つのパターンがあります。
※農地バンク法:正式名称は、 農地中間管理事業の推進に関する法律。
農地バンク法を利用できるのは、次の場合です。
手続きの流れは、以下の順番となります。
※農地バンクから農地を借りる人は、賃料は農地バンクに支払います。そして、農地バンクから促進計画に定められた人(一般的には農地の管理者)に支払われます。受取った賃料は、共有者間で独自に分けることになります。
※借り手が亡くなった場合は、農地バンクが新たな借り手を探すので、共有者と農地バンクとの間の貸借権には影響はありません。
農地法を利用できるのは、次の場合です。
上記の4つの項目は、遊休農地か遊休農地のおそれのある農地であり、このときには農地法を利用することになります。
※上記4番目は、農地バンク法を利用した申出で農業委員会が共有者を探した際、共有者が耕作を行わないにもかかわらず促進計画案に反対した場合をいいます。
手続きの流れは、以下の順番です。
所有者不明農地制度についてご案内しました。
所有者不明農地制度は、所有者不明農地の有効活用を促進し、農業の規模拡大をのぞむ人にも、農地を貸したいという共有者にも役に立つ制度です。
農地の貸借を検討している方は、ぜひこの制度を活用することをご検討ください。
所有者不明農地制度の手続きでご相談がございましたら、ぜひ幣事務所にお問い合わせください。