全面コンクリート張り農業用ハウス(農作物栽培高度化施設)の届出!最新情報と必要書類

2024.11.18更新

 

農業用ハウスの底面をコンクリートで覆いたいけど、手続きが面倒で戸惑っていた方、農地転用許可が不要になりました。

平成30年(2018年)施行の農地法一部改正で、全面コンクリート張りの農業用ハウスが大幅に簡素化され、届出だけで大丈夫です。

 

ここでは、全面コンクリート張りの農業用ハウスなどの農作物栽培高度化施設の届出に必要な書類や手続きを分かりやすくご案内します。

 

1.農作物栽培高度化施設のメリット

  • 農地転用許可が不要で、スピーディに設置の手続きが可能
  • 固定資産税が農地として評価、課税されます
  • 高設棚を用いた水耕栽培やロボット導入、環境制御システムの導入など、高度な農業経営を実現

2.農作物栽培高度化施設の基準

全面コンクリート張りの農業用ハウスなどの農作物栽培高度化施設は、以下の基準をすべて満たす必要があります。(農地法施行規則第88条の3)

以下の基準をすべて満たさない場合は、従来どおり、農地転用の許可が必要です。

  • もっぱら農作物の栽培に利用する施設であること
  • 高さ8m以内軒の高さ6m以内で、平屋構造
  • 屋根や壁面を透過性のないもので覆う施設は、周辺農地に2時間以上日影ができないこと
  • 施設からの排水について、放流先の管理者の同意を得ていること
  • 本制度の対象施設であることが分かる標識を設置していること(届出の受理後に交付されます)

上から3つ目までの項目を詳しくご案内します。

2-1.もっぱら農作物の栽培に利用する施設であること

農作物の栽培と関連性のないスペースが広いなど、一般的な農業用ハウスと比べて適正でないものは、農作物栽培高度化施設に該当しません。

2-2.高さ8m以内、軒の高さ6m以内で、平屋構造

農作物栽培高度化施設の基準
農作物栽培高度化施設の基準

敷地の地盤面から高さ8m、軒の高さ6mの平屋構造の建物です。

ただし、およそ30㎝以下の基礎を施工する場合は、その基礎の上部を地盤面とします。

2-3.屋根や壁面を透過性のないもので覆う施設は、周辺農地に2時間以上日影ができないこと

新しく施設を設置する場合は、春分の日と秋分の日の午前8時~午後4時において2時間以上日影が生じる範囲に、周辺農地が含まれていないことを確認します。

 

一方、既存の施設を農作物栽培高度化施設とする場合は、施設が下表に該当することを確認します。

施設の軒の高さ 敷地境界線から当該施設までの距離
2m以内 2m
2m超 3m以内 2.5m
3m超 4m以内 3.5m
4m超 5m以内 4m
5m超 6m以内 5m

3.具体的な届出方法

農作物栽培高度化施設の届出は、次の書類を提出して行います。

なお、既存の農作物栽培高度化施設を増改築・建替えを行う場合も、同様の届出が必要です。

3-1.提出書類

次の書類を農業委員会に提出します。

  • 届出書
  • 土地の登記事項証明書
  • 施設・標識の配置が分かる図面
  • 営農計画書
  • 公図
  • 案内図
  • 法人の登記事項証明書と定款または寄附行為の写し(申請者が法人である場合)
  • 日影の基準を満たしていることが分かる図面(施設の屋根や壁面を透過性のないもので覆う施設の場合)
  • 河川または用排水路の管理者の同意書(排水を河川または用排水路に放流する場合)
  • 所有者の同意書(施設を所有者以外が設置する場合)
  • 権利者の同意書(施設設置の妨げとなる権利を有する者がいる場合)
  • 許可書など(行政庁の許可が必要な場合)
  • その他

3-2.届出後の流れ

  1. 届出書が受理されると、届出から2週間以内に受理通知書が交付されます。
    • 受理通知書を受領するまで、届出の効力はありませんので、ご注意ください。
  2. 受理通知書を受領後、全面コンクリート張りの農業用ハウスなどの建設に着手することができます。

4.農地法第3条の手続きが必要な場合

次の場合には、農地法第3条の手続き(耕作を目的として農地の権利を有するための手続き)と併せて農作物栽培高度化施設の届出が必要です。

  • 農作物栽培高度化施設を設置するために、農地の取得や借りる場合
  • 農地の取得や借りるとともに、既存の農作物栽培高度化施設の増改築・建替えをする場合

既存の農作物栽培高度化施設の農地の取得や借りるだけで、施設の増改築・建替えがともなわない場合は、農地法第3条の手続きのみが必要です。

 

ただし、この場合でも、施設が基準を満たしておく必要はあるので、通常の農地法第3条の許可申請に追加して書類を提出する必要があります。

5.農地法第4条・第5条が必要な場合

次の場合には、農地法第4条・第5条の手続き(農地を農地以外のものにするための手続き)が必要です。

  • 施設を撤去して、住宅や工場などの施設を設置する場合
  • 施設内部を倉庫や飲食店、直売所などに利用する場合
  • 一時的に上記2つに利用する場合
  • 施設を農作物の栽培に利用されないことが、確実となった場合
  • 農作物栽培高度化施設の基準に満たない施設を設置する場合

6.過去に設置した施設の取扱い

過去に設置した施設については、次の基準をすべて満たす場合は届出をすることで、農作物栽培高度化施設として扱われます。

  • 届出をする時点で、農用地区域内に設置されていること
  • 農地転用の許可を得るなどして施設を設置したことが、許可書などによって確認できること
  • 認定農業者または認定新規就農者が作成した計画で、施設で栽培を行わなくなった場合に施設を撤去し、農地に回復する旨の記載があること
  • 農作物栽培高度化施設の基準を満たしていること

7.施設に設置する太陽光発電設備

施設の屋根や壁面に太陽光発電設備を設置する場合、次のいずれかに該当するときは、農作物栽培高度化施設に該当します。

  • 売電しない場合
    • 発電した電力を、施設に設置されている設備に直接供給し、発電能力が施設の瞬間的な最大消費電力を超えないこと
  • 売電する場合
    • 認定農業者あるいは認定新規就農者が、その計画に位置付けられた施設に設置すること

8.まとめ

農作物栽培高度化施設の届出についてご案内しました。

 

農作物栽培高度化施設の届出は、必要書類を準備し、農業委員会に提出するだけであり、以前よりも簡素化されています。

農地転用許可が不要となり、固定資産税も農地として評価されるため、農業経営の活性化につながります。

 

本ページを参考に、ぜひ、全面コンクリート張りの農業用ハウスなどの導入を検討してください。