農地の取得・賃借の許可について

 

食糧生産の根本である農地を守るため、農業を継続して行う者にしか農地を貸さない、売らないということが、農地法の趣旨です。

 

具体的には、個人・法人を問わず、農地を取得・賃借等をするためには、その農地の所在地である市町村の農業委員会からの許可が必要になります。実務的には、農業委員会事務局との折衝をすることになります。

 

 

では、農地を取得・賃借等するためには、どのような要件をクリアすればいいのでしょうか?

 

農地法第3条によれば、下記の5点を求めています。

  1. 取得する耕作地を全部利用すること (全部効率要件)
  2. 法人は農地所有適格法人であること(法人で農地を取得・賃借等する場合)(農地所有適格法人要件)
  3. 耕作に常時従事すること (農作業常時従事要件)
  4. 定められた面積以上の農地を耕作すること (下限面積要件)
  5. 地域と調和して農業を行うこと (地域との調和要件)

 ※農地法の一部改正により、令和5年4月1日から下限面積要件が廃止されました。

 

(1)取得する耕作地を全部利用すること (全部効率的要件)

取得した農地は、全部利用しなければなりません。加えて、農地を効率的に利用することも求められており、経営規模や作付けする作物、機械の保有状況、農業に従事する人数・労働力、農業に関する技術など、総合的に考慮してこの要件は判断されます。

 

そして、機械、労働力、技術については下記のように考えられています。

機械・・・所有するものだけではなく、リース契約で確保されるものや今後確保すると見込まれるものも含みます。

労働力・・・今後確保すると見込まれるもの、雇用によるものも含みます。

技術・・・農作業従事者(雇用を含む)の技術力や作業委託先の技術力も考慮します。

 

さらにこの要件については、いたずらに厳しく運用し、排他的な取り扱いをしないこと、硬直的な運用は現に慎むべきであることとされおり、実績のない新規就農者にとっては以前よりも参入がしやすくすなりました。

 

実務上では、取得・賃借等した農地をすべて利用するのに十分な営農計画を策定する必要があります。この営農計画に現実性があるかどうかで、許可審査がスムーズにいくかどうかが左右されます。

 

また、既存の農業者が新たな農地を取得しようとする場合に、既存の農地を全部耕作していないときは、是正を求められることがあります。

 

 

(2)法人は農地所有適格法人であること(法人で農地を取得・賃借等する場合) (農地所有適格法人要件)

法人で農地法の許可を得ようとする場合、原則、農地法で定められている農地所有適格法人と呼ばれる法人以外は、許可を得ることができません(ただし例外があります。例外はこちら)。

 

 

(3)耕作に常時従事すること (農作業常時従事要件)

この規定は、農業の継続性を確保する規定と言えます。

 

「常時従事」とは、原則年間150日以上とされています。しかし、画一的に判断されるものではなく、地域の農業経営の状況や繁忙期の状況等を加味して判断されます。

 

なお、この要件は個人で許可を受けようとする場合の要件で、法人の場合にはこの要件を満たす必要はありません(法人の場合は(2)で審査されます)。また、この要件には例外となる規定があります。

 

 

(4)定められた面積以上の農地を耕作すること (下限面積要件)

農地の下限面積を各農業委員会が地域の実情に合わせて定めることができます。

 

一般的に、農業経営を維持するために最低限必要になる面積として、下限面積が設定されています。

 

具体的な下限面積については、各自治体の農業委員会のHPをご覧下さい。

 

※農地法の一部改正により、令和5年4月1日から下限面積要件が廃止されました。

 

 

(5)地域と調和して農業を行うこと (地域との調和要件)

農業は地域との連携が欠かせないものであり、地域の農業の取り組みを阻害するような権利取得を排除するためにある要件です。

 

農業委員会は、許可の判断にあたっては現地調査を行うこととされています。また、実務的には、営農計画書で作付作物を明示し、「誓約書」や「確約書」を提出して地域のルールを遵守することを約束します。