転用許可基準

2018.7.17更新

 

農地を転用するための理由がやむを得ないものであるかどうかが様々な角度から検討されます。

 

農地転用が許可されるためには、大きく分けて「立地基準」「一般基準」を満たす必要があります。

 

以下に「立地基準」と「一般基準」について紹介します。

その他に、農業振興地域についても紹介します。

立地基準

立地基準とは、農地の営農条件と周辺の土地の市街地化の状況によって、農地を区分けし、その区分けに従って許可・不許可の判断が下されます。

 

つまり、対象の農地がどの区分にあるのかによって、農地転用が可能か不可能であるのかが変わってきます。

農用地区域内農地

農振法(農業振興地域の整備に関する法律)に基づいて市町村が定めた農業振興地域整備計画において、農用地区域とされた区域内に存在する農地のこと(「青地」と呼ばれる)。

 

原則、転用は認められません

 

ただし、転用予定農地をあらかじめ農用地区域から外しておく(農振除外)をすれば、農地転用できる場合があります。

甲種農地

市街化調整区域にある特に良好な営農条件を備えている農地で、下記の2つの要件を満たした農地のこと。

  • 10ヘクタール以上の規模のまとまった農地で、高性能農業機械による営農に適すると認められる農地
  • 特定土地改良事業等の施行区域内にあり、その事業の完了年度の翌年度から起算して8年が経過していない農地

この農地も原則転用は認められません

 

ただし一定の場合には、例外的に転用が認められます。

第一種農地

集団的に存在し、良好な営農条件を備えていて、下記の3つの要件を満たしている農地のこと。

  • おおむね10ヘクタール以上の規模のまとまった区域内にある農地
  • 特定土地改良事業等の施行区域にある農地
  • 傾斜、土壌の性質その他の自然的条件からみて、周囲の標準的な農地を超える生産をあげることができると認められる農地

この場合も原則転用は認められません

 

ただし一定の場合には、例外的に転用が認められます。

第二種農地

①第三種農地に近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内にある農地 または②農用地区域内にある農地以外であって、甲種農地、第一種農地、第三種農地以外の農地のこと。

 

上記の①については、次の3点が要件です。

  1. 街路が普遍的に配置されている地域内の農地
  2. 市街地化の傾向が著しい区域に近接する区域内の農地で、その規模がおおむね10ヘクタール未満である農地
  3. 駅、市町村役場等の公共施設から近距離(500m以内)にある地域内の農地

上記の②の具体的な事例としては、中山間地域に存在する農業公共投資の対象になっていない小集団の農地などです。

 

この農地は、申請農地以外の農地では転用目的を達成することができないと認められる場合には、許可が認められます

第三種農地

市街地の区域内または市街地化の傾向が著しい区域内にある農地のこと。

 

具体的には、下記のような農地のことを指しています。

  • 水管、下水管、ガス管のうち2つ以上が埋設された道路の沿道の区域であって、おおむね500m以内に2つの教育施設、医療施設等の公的施設があるもの

  • 駅、市町村役場等の公共施設から至近距離(300m以内)にある地域内の農地
  • 住宅の用、もしくは事業の用に供する施設又は公共施設もしくは公益的施設が連たんしていること
  • 街区の面積に占める宅地の面積が40%を超えること
  • 都市計画法上の用途地域が定められている区域内の農地
  • 土地区画整理事業の施行にかかる区域

この農地は原則、許可が認められます

立地基準のまとめ

区分 転用の許可・不許可 転用の難易度
農用地区域内農地 原則、不許可 極難
甲種農地 原則、不許可
第一種農地 原則、不許可
第二種農地

申請地以外目的を達すること

ができない場合許可

第三種農地 原則、許可

一般基準

一般基準とは、農地の区分に関係なく適用される基準で、土地の効率的な利用の確保という観点から許可・不許可の判断が下されます。

転用事業の用途に供する確実性

(農地を転用して申請にかかる用途に供することが確実と認められない場合には不許可)

 

不許可になる具体例として、下記が挙げられます。

  • 必要な資力・信用があると認められない場合
  • 転用行為の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていない場合 (賃借人が該当し、抵当権者は該当しない)
  • 許可後、遅滞なく申請にかかる用途に供する見込みがない場合
  • 申請にかかる農地と一体になって、事業の目的に供する土地を利用できる見込みがない場合
  • 転用面積が申請にかかる事業の目的からみて適正と認められない場合
  • 他法令にかかる許認可等の見込みが認められない場合
  • 土地の造成(その処分)のみを目的とする場合 (例外規定あり)

周辺の農地の営農条件に対する影響

(周辺の農地の営農条件に支障が生じるおそれがあると認められる場合には不許可)

 

不許可になる具体例として、下記が挙げられます。

  • 申請にかかる農地の転用行為により、土砂の流出または崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合
  • 集団的に存在する農地を端から次第に侵したり、分断するおそれがあると認められる場合
  • 日照、通風等に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合
  • 農道、ため池その他の農地の保全または利用上必要な施設の機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合

一時転用の後に確実に農地に復元されること

仮設工作物の設置その他一時的な利用に供するために農地を転用しようとする場合において、その利用に供された後にその土地が耕作目的に供されることが確実と認められない場合に不許可

農業振興地域

農業振興地域(農振地域)とは、「農業振興地域の整備に関する法律」に従って、農用地確保のための農林水産大臣の基本方針に基づいて、都道府県知事が策定した農業振興地域整備基本方針をもとに、都道府県知事が指定した区域のことです。

 

農振地域の指定を受けた市町村は都道府県知事と協議し、農業振興地域整備計画を定めることになります。

 

この計画の中で、農振地域は、さらに農用地として保全していくべき土地と、それ以外に分けられます。

 

農用地として保全してくべき土地は、農用地区域内農地と呼ばれ、今後10年間にわたって農地としての利用が考慮されていて、そのために必要な予算や資材が投入されます。

具体的には、大型農業機械が使いやすいように土地改良工事を行ったり、若い人が農業を行いやすいように支援すること、などです。

 

農振地域は農業を推奨している地域になりますが、とりわけ農用地区域内農地は農業を強力に推奨する土地ということになります。

一方で、農振地域内では農業以外のことについては利用を制限しています。

 

市街化調整区域内の農地は制約があるものの、建物を立てたり、資材置き場にすることができたりします。

しかし農振地域内の農用地区域内農地は、そのように農地転用はできません。

 

どうしても必要な場合は、当該の農地を農用地区域から除外してもらう手続きが必要です。

その後で、農地法における農地転用の許可を得なければなりません。

この申請を「農振除外の申出」などと言います。

 

この申請はほとんどの自治体で、年2回しか受付けを行っておらず、回答が得られるのも半年程度かかります。

申請のための事前相談をしてから回答を得るまでに1年くらいかかるのが通常のことだと思われます。
 

農振除外申請には、慎重に検討してから望む必要があると思います。