営農型太陽光発電に関する農地転用許可基準について

2025.2.24 更新

 

近年、農業の活性化(農家の所得向上や農地荒廃の防止・解消)と再生可能エネルギーの利用促進を両立させる取り組みとして、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が注目されています。

 

ソーラーシェアリングとは 、農地に支柱を建て、耕作をしながら、その上に太陽光パネルを設置して発電を行うものです。

しかし、発電に重点が置かれ、耕作をおろそかにしている事例がちらほら見られるようになったきたことから、それまで農林水産省からの通知で定めらてきた農地転用の許可基準を、2024年から農地法令によってはっきりと定められるようになりました。

 

ここでは、ソーラーシェアリングに関する農地転用の許可基準をご案内していきます。

 

1.営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは

ソーラーシェアリングとは、農地に簡単な構造ですぐに撤去できる支柱を建てて、農地の上部空間に太陽光発電設備を設置し、農業を継続しながら発電を行うことです。

 

この際、支柱部分については、農地の一時転用許可が必要となります。

 

なお、野立ての太陽光発電設備のために、農用地区域内農地(青地)や甲種農地・第1種農地を農地転用することはできませんが、ソーラーシェアリングの場合にはそれらの農地の区分であっても、一時転用許可を受けることが可能です。

2.ソーラーシェアリングの一時転用許可の基準

ソーラーシェアリングのために農地の一時転用許可を得るには、通常の農地転用許可基準に加え、以下のソーラーシェアリングに特有の基準を満たす必要があります。

  1. 一時転用の期間が下表のとおりであること※1
  2. 一時転用完了後(太陽光発電廃止後)に、支柱部分でも確実に耕作を行い、一時転用する面積が必要最小限であること。なお、変電設備などの付随する設備は、近隣の農地以外に設置することが求められますが、やむを得ず一時転用して設置する必要がある場合は、その規模と位置が適正であること
  3. 設備下部の農地において、適切に耕作すること(具体的には、以下に該当することです。)※2
    • 設備下部の農地で栽培する作物の単収が、同じ市町村内の平均的な単収のおおむね2割以上減少しないこと
    • 設備下部の農地で生産された作物の品質に著しい劣化が生じるおそれがないこと
    • 遊休農地を再生する場合、継続してその状態を維持し、遊休農地に戻らないこと
  4. 都道府県などに毎年の栽培実績と収支の報告を適切に行うこと
  5. 設備の角度・間隔などからみて、作物の生育に適した日照量を保てること
  6. 支柱の高さ、間隔などから、必要な農業機械を効率的に利用できる空間が確保されること(支柱の高さは、原則2m以上
  7. 設備周辺の農地の効率的な利用、用排水施設の機能に支障が生じないこと。特に、農用地区域内農地(青地)では、以下を注意すること。
    • 農地の集団化、農作業の効率化などの農業上の効率的
    • 総合的な利用に支障を生じないこと
    • 土地改良事業などの施行や農業経営の規模拡大などの施策の妨げとならないこと
  8. 当該農地が地域計画の区域内である場合、ソーラーシェアリングの実施について、地域計画の協議の場で合意を得ていること
  9. 設備を撤去するのに必要な資金・信用があること
  10. 設備が電気事業者の電力系統に連係する場合、その契約を電気事業者と締結する見込みがあること
  11. 他の農地に関して、違反転用による原状回復命令などを命じられていないこと

 

区分 一時転用の期間

(1)担い手が農地を利用する場合

※担い手とは、以下のいずれかの者のことです。

  • 効率的・安定的な農業経営をする者
  • 認定農業者
  • 認定新規就農者
  • 将来法人化して、認定農業者となることことが見込まれる集落営農
10年以内

(2)遊休農地を再生して利用する場合

※遊休農地と遊休農地以外の農地を併せて利用する場合、遊休農地の面積が全体の過半であり、それらの農地がつながって、まとまっている場合を含む。

10年以内
(3)第2種農地・第3種農地を利用する場合 10年以内
(4)上記(1)から(3)以外の場合  3年以内 

※1 ソーラーシェアリングを継続するためには、一時転用の期間が満了する前に、再度許可申請をすることが必要となりますので、忘れずに手続きをしてください。なお、再許可申請の場合は、それまでの耕作状況を考慮して判断されます。

 

 

※2 営農計画書によって、設備下部の農地において適切に耕作できることを示します。

3.手続きに必要な書類

ソーラーシェアリングのために農地の一時転用をする場合は、通常の農地転用の許可申請に必要な書類に加えて、以下のソーラーシェアリングに特有の書類も必要です。

  1. 発電設備の設計図
  2. 営農計画書(設備下部の農地における栽培計画、収支計画などを記載)
  3. 設備設置による下部の農地での営農への影響見込みとその根拠となる資料
    1. 通常の場合は以下のいずれかを記載した書類 
      • 設備下部の農地で栽培する作物について、当該市町村における生産量と品質に関するデータ(例えば、試験研究機関による調査結果など)
      • 設備下部の農地で栽培する作物について知見を有する者(試験研究機関、設備の製造業者など)の意見書
      • 当該申請に先行して設備下部の農地における農業者の栽培実績(当該市町村内で行われたものに限る)
    2. 当該の市町村において栽培されていない作物や生産をするのに長期間かかる作物の栽培の場合は、以下のいずれかを記載した書類(なお、以下のいずれかを記載した書類に加えて、設備下部の農地で栽培する作物について知見を有する者の意見書が必要となります。)
      • 申請者自身または第三者に委託して実施した、当該市区町村内での試験的に実施した栽培実績
      • 単位面積当たりの収穫量の根拠を含む栽培理由
  4. 設備撤去費用を設備設置者が負担することを証する書類
  5. 毎年、設備下部の農地において栽培した作物の栽培実績書と収支報告書を提出することを誓約する書類

4.許可取得後の義務

ソーラーシェアリングのための農地の一時転用許可を得た後、守らなければならない義務があります。

4-1.栽培実績の報告

翌年の2月末までに、栽培実績書を提出して報告を行います。

栽培実績書には、次の事項を記載します。

  • 収穫された作物がある場合、その生産状況
  • 作物が栽培されているが、収穫された作物がない場合、その理由と同じ生育段階にある作物と比較した場合の生育状況

なお、栽培実績書を提出するにあたっては、その内容について、必要な知見を有する者(普及指導員、試験研究機関など)の確認を受けておくことが必要です。

4-2.収支の報告

同じく、翌年の2月末までに、収支報告書を提出して報告を行います。

 

収支報告書には、農業など(発電収入や発電事業者からの協力金などを含む)の収支状況を記載します。

4-3.その他の義務

許可後は、以下についても行う必要があります。

  • 設備下部の農地において適切な耕作を続けること
  • 設備下部の農地において適切な耕作がされなくなった、またはその見込みがある場合は、適切な日照量を確保するなどの対策を迅速に行うこと
  • 以下の場合にすぐに報告すること
    • 設備下部の農地において適切な耕作がされなくなった、またはその見込みがある場合
    • 設備を改築する場合
    • 発電を廃止する場合
    • 第三者に継承する場合
  • 設備下部の農地で耕作を行わない場合や発電を行わない場合は、設備をすぐに撤去して、農地に復元すること

なお、設備が下部の農地の耕作に支障を与えていることを理由に、都道府県などが現地調査を行った場合、必要な対策を行うように指導される可能性があります。

この指導に対して十分な対策ができなかったときは、設備撤去の指導があり得ます。

また、必要な対策を行うように指導されたのにもかかわらず、無視した場合は、原状回復命令が下される可能性があります。

 

また、適切な耕作を続けるために作物の変更を行おうとする場合は、農業委員会に相談することができます。

5.注意事項

以下のような適切な対応が求められています。

  • ソーラーシェアリングの設備は、農閑期に設置する方が良いです。
  • 設備を設置することによって農業収入が減少してしまうような作物には転換しない方が良いです。
  • 設備の設置者と耕作者(農業者)が異なる場合、設備下部の農地に地上権を設定する必要があるので、農地法第3条の許可が必要です。

6.農地転用許可申請以外の手続き

一時転用許可申請以外にも、経済産業省への事業計画認定申請や電力会社との接続契約などの発電事業を行うための一般的なFITの手続きがあります。

 

その他に、近年では自治体が太陽光発電設備の設置に関して規制を行っているため、条例の許可が必要な場合も多いです。

条例では、住民説明会の開催を必須としている自治体が多いので、発電事業について十分に説明できるようにするための準備が必要となります。(ただし、施工業者が代わりに説明をしてくれることが多いと思います。)

 

それ以外にも、景観法や文化財保護法などの規制の対象となることもあり得るので、手続きだけでも大変な労力が必要になると思います。

7.まとめ

これまで、ソーラーシェアリングのための農地の一時転用許可基準を中心にご案内をしてまいりました。

 

農業で十分な収入を確保するのは大変ですので、ソーラーシェアリングによる発電事業によって所得を増やしていくことも十分検討の価値はあると思います。

 

ただし、法律による規制をクリアするための作業は煩雑であるため、すべての手続きをご自身で行うのはとても大変です。

専門家から必要なサポートを受けて、手続きを進めていくのが良いと思います。

また、太陽光発電については、こちらのリンクもよろしければクリックしてください。 

リンク⇒ アスグリ|太陽光発電のお役立ち情報メディア

 

太陽光発電をはじめとした農地の活用や税金について解説しています。

太陽光発電に興味がある人や、太陽光発電を導入するかどうかを検討している人にとって、有益な情報源となります。

参考にしてみてください。

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