2024.11.21更新
農地も他の土地と同様に相続することができます。
ここでは、農地の相続に関する基本的な事項についてご案内します。
食料の安定供給のために、農地は農業生産の基盤とされ、現在および将来の国民のための貴重な資源でもあります。
そのため、農地の移転などや転用については農地法による許可制が採用され、制限が課されています。
この制限の対象になっているのは、農地の移転などや転用が、意思表示によってなされるときです。
相続は、人が亡くなったときに開始し、その人の財産が自動的に相続人に承継されます。
相続による承継は、その人の死亡によって当然に生じるのであって、意思表示によって行われるわけではないので、農地法によって規制はされません。
しかし、農地法による規制がない結果、農業委員会が農地の権利関係や実態を把握しずらくなったことで、耕作放棄地につながってしまう事態になりました。
そのため、平成21年の農地法改正によって、届出が義務化されました。
相続人が2人以上いるときは、財産を遺産分割することがありますが、相続開始のときにさかのぼって遺産分割どおりに承継されます。
このように、遺産分割は相続と実質的に変わらないことから、農地法による規制はされません。
ただし、このときも、届出をする必要はあります。
遺贈とは、遺言によって行われる贈与のことで、包括遺贈と特定遺贈の2種類があります。
包括遺贈:遺産の全部または一定割合を遺贈することです。
特定遺贈:特定の遺産を遺贈することです。
包括遺贈の場合は、相続と同様であることから、農地法の規制はされず、届出のみが必要です。
特定遺贈の場合は、相続人への特定遺贈は相続と実質的に同様であることから、農地法の規制はされず、届出のみが必要です。
ただし、相続人以外の者への特定遺贈は、相続ではなく贈与と考えられることから、農地法による許可が必要です。
相続(遺産分割、包括遺贈、相続人への特定遺贈を含む)、法人の合併・分割などは、農地法による許可は不要ですが、届出をすることは義務です。
相続などがあったときは、できるだけ早く(おおむね10か月以内)届出をしてください。
届出の際は、農地のある自治体の農業委員会に連絡をして、必要な書類や手続きについて確認してください。
農業委員会の窓口で届出書を入手して、必要書類を添付して提出します。
添付書類としては、相続などがあったことを確認できる書類(相続登記済みの登記事項証明書など)が必要です。(詳細は、農業委員会で確認してください。)
※自治体によっては、農業委員会のホームページからダウンロードすることも可能です。
なお、この届出は、農業委員会が実態を把握するために必要なものであり、届出をしたことにより、その届出内容が効力を生じるということではありませんので、注意してください。
相続などがあったときの届出は義務ですが、もし届出をしなかったり、うその届出をした場合は罰則(10万円以下の過料)があります。
相続した農地が土地改良区の受益地の場合は、農業委員会への相続の届出に加えて、土地改良区の組合員変更の手続きも必要です。
まずは、農業委員会に、相続した農地が土地改良区の受益地に該当するか問い合わせてみてください。
明確な回答が得られない場合は、土地改良区の連絡先を教えてもらえると思いますので、直接問い合わせてみてください。
土地改良区の組合員変更の手続きでは、「組合員資格得喪通知書」を提出して行います。
ともに提出する添付書類は直接お問い合わせください。
【土地改良区とは】
土地改良事業という公の事業を行う目的の法人で、農地の生産力を高めるために土地の改良を行います。
具体的には、田畑に水を引いたり、余分な水を排出したりするための施設の整備・維持管理、土地の平坦化や土壌改良などを行います。
これにより、農作物の収穫量を増加させたり、土地の価値を向上させたりします。
農地の相続による届出などについてご案内をしました。
許可が必要なケースと届出が必要なケースを下表にまとめています。
相続があった場合には、参考としていただければ幸いです。
許可 | 届出 | |
相続 | 不要 | 必要 |
遺産分割 | 不要 | 必要 |
包括遺贈 | 不要 | 必要 |
相続人への特定遺贈 |
不要 | 必要 |
相続人以外の者への特定遺贈 |
必要 | 不要 |
売買 |
必要 | 不要 |
贈与 |
必要 | 不要 |
貸借 |
必要 | 不要 |
農地転用 |
必要 | 不要 |
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