2024.9.17
農業振興地域内の農用地区域内農地は、農地転用することは極めて難しいと、すでに別のページでご案内しています。
しかし、あきらめないでください。
手続きを経ることによって、農地転用できる可能性はあります。
ここでは、農業振興地域内の農用地区域内農地における農地転用についてご案内していきます。
農用地区域とは、農業振興地域の整備に関する法律(略称:農振法)によって定められています。
まず、農林水産省が基本方針を策定し、この方針に基づいて都道府県が農業振興地域を指定し、さらに農業振興地域整備基本方針を定めます。
次に、都道府県が定めた農業振興地域整備基本方針に基づいて、市町村が農業振興地域整備計画(市町村整備計画)を定め、その計画の中で、農業振興地域の中でも特に農業の発展をさせるべき区域を農用地区域として定めます。
農用地区域では、農業基盤の整備が総合的・計画的に実施されるため、重点的に公共投資が行われます。
もし、農用地区域内の農地の1か所が、農地転用によって農業に関係ない土地となってしまうと、計画全体に影響をしてしまいます。
よって、農地転用は限定的に、極めて慎重に行われる必要があります。
農用地区域は、農用地、混牧林地、土地改良施設用地、農業用施設用地という4つの用途区分が定められています。
農用地区域内にある農地は、これらの内の「農用地」に該当します。
農用地区域内の農地は、「青地」とも呼ばれます。
農用地区域内農地は、このままでは農地転用をすることが極めて難しいため、転用するにあたって何らかの対処が必要です。
農用地区域は市町村整備計画に定められていることから、この計画を変更することが、農地転用をする上ではとても重要となります。
計画は、市町村が自ら変更するものであるため、転用をしようとする者は申出(単なる意思表示)をするのであって、許可申請をするわけではありません。
※農振法では、計画変更の申請のやり方は規定されていません。よって、申出者からの申出内容を検討して、市町村が計画を変更するか否かを判断します。
農用地区域内農地を農業とは関係ない目的に利用する場合(例えば、住宅や月極駐車場にする場合)、4つの用途区分のどれにも当てはまらないことから、農用地区域から除外する手続き(農振除外)をする必要があります。
農用地区域農地に以下のような農業施設を建築する場合は、用途区分が「農用地」から「農業用施設用地」に変わります。
よって、「用途区分の変更」(軽微変更)をする必要があります。
≪農振法第13条第2項≫
”前項の規定による農業振興地域整備計画の変更のうち、農用地等以外の用途に供することを目的として農用地区域内の土地を農用地区域から除外するために行う農用地区域の変更は、次に掲げる要件の全てを満たす場合に限り、することができる。”
農振除外されるためには、以下の6つの要件をすべて満たす必要があります。
しかし、要件を満たすことは、農振除外のために最低限求められることであって、要件を満たしていれば必ず除外されるということではありません。
≪農振法第13条第2項第1号≫
”当該農業振興地域における農用地区域以外の区域内の土地利用の状況からみて、当該変更に係る土地を農用地等以外の用途に供することが必要かつ適当であつて、農用地区域以外の区域内の土地をもつて代えることが困難であると認められること。”
除外予定地を転用することが必要で、かつ適当であり、他の土地では代わりにならないということが必要です。
つまり、具体的に転用する計画があって、すぐに利用する予定であり、転用する理由から考えて必要最小限である必要がありますということです。
そして、他の土地では代わりにならないということです。
例えば、農用地区域以外で利用できそうな土地がある場合や、農用地区域の土地が安いという理由の場合は、この要件を満たしません。
≪農振法第13条第2項第2号≫
”当該変更により、農用地区域内における農業経営基盤強化促進法(昭和五十五年法律第六十五号)第十九条第一項に規定する地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないと認められること。”
除外することによって、地域計画の達成に支障がないことが必要です。
≪農振法第13条第2項第3号≫
”前号に掲げるもののほか、当該変更により、農用地区域内における農用地の集団化、農作業の効率化その他土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないと認められること。”
除外することによって、農地の効率的な利用に支障がないことが必要です。
つまり、除外することによって、まとまっていた農地が細かくなってしまったり、農用地以外の利用目的の土地が混在するようになってはいけません。
また、除外することによって、日照・通風や雨水・汚水の流れによって農業に支障がでてしまってもいけません。
以上のことから、除外するのであれば、農用地区域の真ん中部分ではなく、端の方の農地を除外するようにした方が良いです。
≪農振法第13条第2項第4号≫
”当該変更により、農用地区域内における効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農用地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがないと認められること。 ”
除外することによって、効率的・安定的に農業をしている者への農地の集積に支障がないことが必要です。
※除外されることによって、効率的・安定的に農業をしている者の経営規模が大幅に縮小されたりしてはいけません。
≪農振法第13条第2項第5号≫
”当該変更により、農用地区域内の第三条第三号の施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがないと認められること。”
除外することによって、ため池、排水路、農道などに支障がないことが必要です。
≪農振法第13条第2項第6号≫
”当該変更に係る土地が第十条第三項第二号に掲げる土地に該当する場合にあつては、当該土地が、農業に関する公共投資により得られる効用の確保を図る観点から政令で定める基準に適合していること。”
土地基盤整備事業(用排水路の新設・変更や区画整理、農用地の造成などの事業)から、8年以上経過していることが必要です。
主に下記の書類が必要となりますが、それぞれの自治体で若干異なるため、事前に確認をしてください。
手続きは随時受付されてはおらず、受付時期は自治体によって異なっていますが、年に2回~4回は受付されています。
なお、市町村整備計画の見直しが行われている場合は、受付を停止していることがありますので、事前の確認が必要です。
申出を行ってから除外の可否がわかるまで、6か月以上かかることがよくあります。
市町村域整備計画は、都道府県が定めた農業振興地域整備基本方針に基づいているため、計画を変更するためには都道府県とも協議が必要であることから、判断を下すまでに長い時間を要します。
軽微変更するためには下記の条件を満たす必要があります。
主に下記の書類が必要となりますが、それぞれの自治体で若干異なるため、事前に確認をしてください。
手続きは、主に随時受付されています。
申出を行ってから、用途区分の変更の可否がわかるまで1~3か月かかります。
市町村整備計画の変更が行われた後、農地法の許可や都市計画法の許可、必要であれば建築基準法の手続きなどの他法令の手続きも必要です。
ですから、手続きの準備を始めてから、実際に工事に着手できるまで1年以上かかる場合も十分ありえます。
なお、農地法や都市計画法などの諸手続きにおける許可の見込みがなければ、そもそも市町村整備計画の変更もされません。
よって、市町村整備計画の変更について、担当する農業振興課などの部署に相談する際には、農地法を担当する農業委員会や都市計画法を担当する都市計画課などの部署へも同様に相談をする必要があります。
農用地区域内農地での転用には、市町村整備計画の変更の手続きが必要であるため、この計画変更の手続きについてご案内をしました。
この手続きはとてもハードルの高い手続きではありますが、決してできない手続きではありません。 本ページを参考にしていただければ、幸いです。
農業振興地域の農用地区域内の農地で、農地転用をご検討の方は、お困りのことがありましたら、ご遠慮なさらずお問い合わせください。
また、ご自身が所有されている農地が、農業振興地域に該当するのか分からないという方も、ご遠慮なさらずお問い合わせください。