2026.1.7
耕作を目的とした農地の売買において、売主と買主の間のトラブルを未然に防ぐためには、適切な売買契約書の作成が不可欠です。
農地は一般の土地とは異なり、農地法の制限が存在するため、契約書の作成の際も注意が必要です。
ここでは、農地の売買契約書を作成する際に、特に注意すべきポイントを紹介します。
耕作目的での農地売買は、農地法第3条の許可を受けることではじめて有効となり、所有権を移転することができます。
つまり、許可が下りない限り、売買の効力は発生しません。
そのため、以下の項目をはっきりと定めておきましょう。
上記については、あわせて「期限が守られなかった場合にどうするか(通知や解除)」についても記載しておくと、手続きが滞るリスクを減らすことができます。
また、万が一、許可を得られなかった場合の対処法(契約の解約など)についても明確にしておきましょう。
記載例:「農地法第3条の許可が得られなかった場合、本契約は失効し、売主は受領済みの金銭を無利息で買主に返還しなければならない。」
登記事項証明書に記載されている所有者(売主)の住所・氏名と住民票・印鑑証明書の内容が一致しているかを必ず確認しましょう。
もし、一致していない場合は、売買の前提として、登記名義人の変更登記などの手続きが必要となります。
売買の対象となる農地の、登記簿上の所在・地番・地目・地積を確認しましょう。
登記簿上の地目が「田」や「畑」であれば、たとえ現況が休耕地で荒れていても、農地法の規制対象となり得ます。
また、登記簿上の地目が「田」や「畑」以外であっても、現況が農地であれば、同様に規制を受けることになります。
契約時に、一定の金額を支払うことが多いですが、これが内金なのか手付金なのかをはっきりとさせましょう。
手付金であれば、以下のように複数の意味合いがあるため、いずれにあたるのかもはっきりとさせましょう。
※賠償額の予定とする場合は、手付金の没収または倍返しによって賠償とするので、それ以外に損害賠償を請求できません。
「代金の支払」、「所有権移転登記の申請」、「農地の引き渡し」の3つは、通常、同時にそれぞれと引き換えに行います。
許可証受領後の具体的な手順を定めておきましょう。

対象の農地に抵当権などの担保権が設定されていないか登記簿で確認し、もし設定されているようでしたら、そのままで買い受けることは安心できませんよね。
ですから、代金完済までに売主の責任でこれらの権利を消滅させることを義務付けましょう。
農地の売買の手続きには様々な費用が掛かります。
主要なものとして、以下の負担が考えられますが、売主と買主のどちらが負担するのか、明確にしておきましょう。
※荒廃農地などの場合、農地法第3条許可申請の前に、農業委員会から「耕作可能な状態にするよう」指示されれることが通常です。
固定資産税や土地改良区の賦課金などについて、どの時点(通常は、所有権移転の日)で売主・買主の負担を切り替えるかを定めましょう。
日割り計算で精算するのが一般的です。
引き渡された農地が、契約内容に適合していない場合(例:土壌汚染や、大きな石が大量に埋まっているなど)の責任です。
民法の規定より、買主は売主に対し、以下の請求が可能です。
(ただし、買主売主の双方の合意によって、内容を変更することが可能です。)
不適合責任に関する通知ができるのは、不適合を知ったときから1年以内です。
ただし、売主買主の双方が農業者(事業者)である場合は、引き渡しから6か月以内に通知することが必要であるため、できるだけ早い確認が必要です。
契約不適合責任の規定は、契約書に記載がなければ法律の規定を適用し、契約書に記載があればその内容に従います。
よって、当事者の合意で免除したり、期間を短縮・延長することが可能です。
ただし、以下の場合には免除できません。
※1:売主が、通常は調べる状況であるはずなのに調べなかった場合も、含むことがあります。 ※2:買主が非農業者の個人である場合とは、自家消費の目的で作物の栽培を行う人と想定できます。
そもそも契約不適合であるかどうかを判断するためには、その農地を何の目的で利用するかが明確である必要があります。
「耕作するために買い受ける」という目的を契約書に明記することで、「耕作に適しない状態」であれば、契約不適合であることを主張しやすくなります。
債務の不履行があった場合、解除または損害賠償を請求することがありえますが、特約のない限り、損害賠償請求額は請求する側が立証することになります。
しかし、損害賠償額を立証することは非常に困難です。
そのため、あらかじめ損害賠償請求額またはその算定方法(例えば、売買代金の○%)をあらかじめ定めておくことも有効な方法です。
※袋とじにせず、契約書の見開き部分の両ページにまたがるように契印することも可能です。
農地の売買は、一般的な宅地の売買とは異なり、農地法という強力な法律の制約を受けます。
今回ご紹介した注意点はあくまでも「基本」であり、それぞれの農地の事情によって、追加する事項は千差万別です。
「知り合い同士だから口約束で大丈夫」「ひな型をそのまま使えばいい」という安易な判断が、後に深刻なトラブルを招いてしまうこともあり得ます。
大切な農地を次の代にも確実に引き継ぐため、リスクを予測した契約書を作成することが、一番の近道になります。
買主様と売主様の間の農地売買の約束を書面にする際は、ぜひ農地手続きの専門家である行政書士にご相談ください。
当事務所が、皆様の円滑な農業経営を全力でサポートします。
※すでに売主または買主とトラブルになってしまった、という場合は弁護士にご相談をお願いいたします。
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