2025.12.5更新
「農地を売りたい・買いたい」と考えている農地所有者・農家の皆さま、「代金を支払ったのに所有権移転登記ができない」「先に農地を引き渡していいのか」などの、農地の売買には一般の不動産取引にはない特有の不安やトラブルがつきものです。
なぜなら、農地の売買は農地法による強力な規制を受け、農地法第3条の許可がないと、たとえ契約書を交わして代金を支払っても所有権が移転しないからです。
ここでは、農地売買で実際に起こり得る具体的なトラブル事例を取り上げて、対処の考え方と注意点を分かりやすくご案内します。
安全かつ確実な取引のために、ぜひご活用ください。
農地法第3条許可とは、農地を購入・貸借などする際に、農業委員会から受ける許可のことです。
農地を効率的に利用して耕作できる者に限り許可が認められ、この許可を得てはじめて売買や貸借の契約の効力(所有権の移転など)が生じます。
したがって、許可がなければ、たとえ当事者間で契約書を交わしていても、購入者は所有権移転を請求することができません。
購入者から代金を受け取り、許可申請も済ませたが、まだ許可を得る前に引き渡しを求められた場合について考えます。
農地所有者としては、「代金は受け取ったがまだ許可が出ていない段階で、引き渡しの準備もできていないのに、引き渡さないといけないのか」と不安になるでしょう。
許可前は、まだ所有権が購入者に移転しておらず、引き渡しを受けても、購入者がその農地を占有する法的根拠はありません。
また、許可前に引き渡しがあると、購入者による農地への実質的な支配が及び、農地法の趣旨に反することとなります。
結論:よって、許可前の農地の引き渡しは認められません。
なお、農地法第3条に違反した場合、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
この罰則は、引き渡しを求めた購入者だけでなく、引き渡しをした売主に対しても適用される可能性があります。
農地法第3条の許可を条件に農地を購入し、代金も支払い、引き渡しを受けていたにもかかわらず、農地所有者から返還を求められた場合について考えます。
購入者としては、売買の約束をして代金も支払っているのに、農地を返すように求められて戸惑ってしまうでしょう。
前述のとおり、許可を得る前の引き渡しであった場合、売買契約の効力は生じていないため、農地の所有権は購入者に移っておらず、農地を占有することについて何の法的根拠もありません。
結論:よって、農地所有者が返還を求めてきた場合、購入者はそれを拒む理由はなく、農地を返還せざるを得ないという結果になります。

許可を得られないことが確定した場合、購入者は農地所有者に対して、支払い済みの代金の返還を請求することは可能と考えられます。
しかし、代金返還と引き換えに、農地返還を行うという形の主張(「代金を返してくれたら農地も返すよ」という主張)は原則としてできません。
なぜなら、許可前の農地の引き渡しは罰則が適用される可能性があり、この違反状態を解消する農地返還の方が、代金返還よりも優先されると考えられるからです。
現実的には、双方が話し合い、農地返還と代金返還を同時に行えるように進めていくことが望ましい解決策です。

契約書に代金支払日と所有権移転登記日を定めているのに、許可が得られないままその日を迎えてしまった場合について考えます。
購入者としては、「代金支払う必要があるのか」、「支払ったとしても所有権は移転できるのか」、と心配になるでしょう。
農地の売買契約書での記載しだいですが、一般的には、代金支払いと所有権移転登記は同時に行うと定めていることが多いです。
当然、所有権移転登記は農地法第3条の許可が前提です。
よって、許可が得られていない場合は、所有権移転登記ができないため、同時に行うはずの代金の支払いは、支払日を迎えてもする必要がありません。
ただし、契約書に「許可がなくても代金支払日に支払う」旨の特別な定めがあればそれに従いますが、支払いをしても所有権移転登記はできません。
通常は、申請前に農業委員会事務局に事前相談を行い、許可の見込みを確認してから申請するため、不許可となることはほとんどありません。
万が一、不許可となってしまった場合の処理方法は、契約書に記載されていればそれに従います。
もし、契約書に記載がない場合、特別の事情がない限り、不許可になったことは購入者に責任があるわけではないため、購入者の代金支払いの義務はなくなります。
亡くなった父親から相続した農地について、生前に父親から購入したと主張する人物が現れ、契約書もないのに引き渡しを求めてくる場合について考えます。
自分の知らないところで購入したという人物が現れた場合、困惑し、強い不安を抱くのは当然ですよね。
売買契約とは、以下の意思が合致することで成立し、書面がなくても有効に成立します。
契約書の必要性は、契約の存在や契約の内容をめぐるトラブルの発生を防止するためです。
(農地の場合は、売買の意思の合致のほかに農地法第3条許可が必要です。)
契約書がない場合、「そもそも契約自体がないのではないか」という疑いが生じます。
そこで、売買契約の存在を推認できる間接的な事実の有無を検討する必要があります。
例えば、次のような事実の有無です。
これらの書類がない場合は、売買契約があれば当事者に当然見受けられるはずの言動の有無を検討します。
例えば次のようなことの有無です。
これらのことがあれば、売買契約の成立が認められる可能性はありますが、その場合でも、農地法第3条許可を取得していない限り、買主は所有権移転や引き渡しを求めることはできません。
一方、売買契約の存在を推認させる事実がないのであれば、引き渡しを拒むことができます。

買主と農地所有者(売主)との間で売買契約をし、売主が購入者に代金を支払ったが、なぜか買主が許可申請をしない場合の契約解除の可能性について考えます。
売主としては、早く許可を得て農地を手放したいのにそれができず、場合によってはいつまでも固定資産税を支払い続けるということになれば、大きなストレスがかかるでしょう。
契約の当事者の一方が、自らの義務(債務)を果たさない(不履行)場合、その相手方は期限を定めて債務を履行するよう通告し、それでも債務が不履行であれば契約を解除することができます。
しかし、契約には中心的な債務のほかに、付随する細かい債務もあります。
債務の一部分だけに不履行があるというだけで、契約全体が解除できるということではありません。
不履行が軽微であれば、契約を維持させることに何の問題もないため、解除は認められません。
農地法第3条許可申請は、売主と買主が共同で申請することが原則です。
したがって、買主には、売主とともに申請を行うという、「協力する義務」があると言えます。
しかし、買主の中心的な債務とは代金を支払うことですから、すでに代金全額を支払っている買主が申請に協力しないという「付随的な債務の不履行」だけでは、契約の解除ができる可能性は低いです。
この場合は、売主から買主に対して、許可申請に協力するように裁判で請求をし、その判決によって許可申請をすることになるでしょう。
※裁判の具体的なことは弁護士にご相談ください。
売主として、予期せず、いつまでも固定資産全を支払い続けることになってしまった場合は、その費用を買主に請求することは認められます。
農地の売買では、次の点を押さえることでトラブルを防ぎやすくなります。
農地の売買を行う際には、農地法第3条の許可が不可欠であり、この許可がなければ売買の効力が生じないことに注意が必要です。
また、許可前の引き渡しはトラブルや罰則が適用されるリスクがあるので、避けた方が良いです。
契約書を作成することで万が一のトラブルを防ぐことが可能なので、作成をおすすめいたします。
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農地の売買を成功させるためには、「農地法第3条許可の確実な取得」と「万全な契約書によるリスク回避」が不可欠です。
当事務所では、農地の特性を理解した専門家として、農地法第3条許可の申請代理や、農地売買契約書の作成サポートを行っております。
「これで許可は出るだろうか?」「契約書の内容が心配だ」というご不安がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
※実際にトラブルが発生している場合は、弁護士へのご相談をお願いします。
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